サッカー初心者の効果的な練習の進め方
サッカーは足でボールを扱うという非日常的な動きがメインのスポーツなので、練習なくして上手くなることはありません。
しかし、どんな風に練習を進めていけばいいのか分からない、という初心者の方も多いと思います。それに、社会人プレーヤーは練習時間が限られているので、できるだけ効率的な練習をしたいものです。
そこで、今回は、サッカー初心者の効果的な練習の進め方を紹介していきます。具体的な練習メニューというよりは、練習の進め方、練習メニューの組み方についてお話していきます。
効果的な反復練習のやり方
サッカーの試合では、周りを見て、その時々の状況に応じてプレーします。その中で、キックやトラップをするときに、いちいちフォームを気にしている余裕はありません。
試合中の技術は、ほぼ無意識に発揮されるように体に覚えさせておく必要があります。そのために必要なのが反復練習です。反復練習することで、技術のプログラムが脳に保存され、自動的に体が動くようになります。
※詳しくは、こちらの記事を参照してください。
⇒サッカーの上手い人に見る上達するための2つのポイント
とは言うものの、サッカーにはたくさんの種類の技術があるので、一つの技術だけをずっと練習しているわけにはいきません。反復練習はいつまで続ければいいのでしょうか?
一つの目安としては、「できるまで続ける」ことです。技術を習得する過程について、東京大学大学院教授の深代千之さんは、このように述べています。
例えば、一輪車の練習をするとき、体を動かすための運動指令信号は大脳から手足の筋肉を動かす神経に直接伝わると同時に、小脳にも伝達されます。
そして、もしうまく乗れずに失敗して転んだ場合には、間違った動きをしたということを伝える信号が小脳に伝えられます。すると、その小脳のシナプスに長期抑制が起こります。
一輪車の練習を続けていく中で、間違った運動指令を伝えるシナプスは次々と長期抑制されて、正しい乗り方をした運動指令だけが伝わるようになります。
つまり、脳はうまくいったときの信号だけ伝えて回路を作り、カラダの動かし方を記憶していくのです。
「大人の「運動音痴」がみるみるよくなる本 深代千之著」より
上手くいった信号だけで回路を作る。人間の脳って超ポジティブ思考ですね。
初めて練習する技術は、当然ながら最初は上手くできません。しかし、続けているうちに何回かに1回はできるようになってきます。この何回かに1回の成功体験の積み重ねが、技術習得に結びついていくのです。
成功体験が無ければ、そもそも脳に記憶されないので、できるようになる前に練習を辞めてしまうと、何も身につかないまま終わってしまいます。何回練習したかは関係ありません。恐ろしいことに、何回練習してもできなければできないままなのです。
反復練習を始めたら、自分の中で「できた」という感覚がつかめるまで繰り返すことが大切です。
そして、一度上手くいっても、そこで練習を辞めずに継続しましょう。上手くいった感覚をイメージしながら練習を繰り返すことで、上手くいくパターンを脳に焼き付けることができます。これにより技術の精度が上がっていきます。
基本の反復練習は、どのレベルになっても続ける
サッカーをプレーするうえで、ボールを止める、蹴るという基本技術は欠かせません。特に初心者は、まずは基本技術をしっかり身につけることが大切です。
そして、基本の反復練習は、どのレベルになっても大切です。プロの選手も基本練習は必ず行っています。
特に中級者以上の方は注意してほしいのですが、体が覚えているからと言って、基本練習を疎かにしないことが大切です。確かに一度身につけた技術は体が覚えているので、練習しなくても全くできなくなることはありませんが、感覚のズレや、筋力の低下などによって、技術にズレが生じてきます。これが原因でスランプに陥ってしまう人もいます。
また、ただ練習すればいいわけではなく、良いイメージを持って練習に取り組むことが大切です。
レベルに応じた練習メニューを組む
基本の反復練習が大切とはいっても、中級者も初心者と同じ練習をしなさい、ということではありません。
例えば、止まったボールをインサイドキックで蹴るという練習は、これからキックを覚える初心者には効果的ですが、すでに蹴れる中級者には効果がありません。簡単すぎて、モチベーション低下を招いてしまうので逆効果です。
また、インサイドキックがまともに蹴れない初心者が、中級者と同じようにダイレクトパスの練習をするのも効果的ではありません。今度は難易度が高すぎて、モチベーション低下を招いてしまいます。
モチベーションを高く持ち、良いイメージで練習するには、その人のレベルに合った練習に取り組むことが大切です。練習メニューの設定の仕方で参考になるのが、分習法と全習法という考え方です。
ある運動課題を3つの部分、(1)、(2)、(3)に分け、まず(1)だけ、次に(2)だけ、最後に(3)だけを個別に練習するのが分習法です。
そして、それぞれがある水準にまで高まったあと、(1)~(3)を統合して行う練習が全習法です。
では、全習法と分習法は、どちらが効果的なのでしょうか?それは学習者のレベルによります。大阪体育大学の荒木雅信氏は、「初心者には分習法がよく、学習者の技能水準が高いほど全習法が効果的である」と結論づけています。
「上達の技術 一直線にうまくなるための極意 児玉光雄著」より
例えば、パスを出す練習について考えてみましょう。
試合で味方にパスを通すために必要な要素を3つに分けて考えてみると、(1)狙ったところへボールが蹴れる技術、(2)味方の位置を把握するスキル、(3)パスカットされないように敵の位置を把握するスキルがあります。(細かく考えれば他にもありますが、今回は割愛します)
ボールが正確に蹴れない初心者は、まず(1)狙ったところへボールが蹴れる技術を身につける必要があります。そこで、インサイドキックから始めます。インサイドキックのフォームの確認から始まり、最終的には動いたボールを正確に蹴れるようになるまで練習します。
次に(2)味方の位置を把握するスキルを身につけます。2人1組の対面パスから始まり、お互い動きながら正確にパス交換できるようになるまで練習します。
最後に(3)パスカットされないように敵の位置を把握するスキルを身につけます。2対1のボールキープや鳥カゴ(ロンド)など、DFを付けたパス練習を行い、カットされないようパスをつなげるようになるまで練習します。(「10本連続でパスを通したら勝ち」など、目標回数を設定して行うと集中力アップにつながります)
細かい部分は割愛しましたが、分習法と全習法について、パス練習を例にするとこんな感じです。
このように、基本練習といっても、プレーヤーのレベルに応じて練習メニューは変わります。それぞれのレベルに合った練習課題を設定することが、効率的に上達するためのキーポイントです。
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